2015年 03月 30日
「心ない」と「罪がない」◆上野市駅前芭蕉像の顛末
先日、AIさんがこの事件の顛末がサイトに出ていますよと教えてくれた(伊賀タウン情報ユー・サンスポ電子新聞)。それによれば「芭蕉像のつえ誤って壊」したのは「土木作業員の少年」ということである。
すなわち「昨年5月10日の午後11時ごろ」、当時16歳の少年がイタズラで台座に登って、バランスを崩して杖につかまった際に折れた。平成27年2月27日決着。知らせを受けるまで、なにも知らなかった母親は謝罪の上「修復費用34万5600円を支払った」という。
イタズラは思いのほか高くついたわけだが、このような失態の一つや二つは誰にも、つまりボクにもあるなあと思って寒気がした。少年も母親も、この失敗を何十年も引きずるのかと思うと気の毒な気もする。「心ないワザ」は、ときどき「罪のないワザ」に端を発したものだから。
2015年 03月 03日
この人の一篇◆ブナ原生林 椎名美知子
篠突く雨
清冽な一筋のながれになって
ブナの木肌を急ぎ急ぎつたう
腐葉土はたちまち水をはらみ
つやつやとブナの若木
林のすべてが語り始めた
低地の沼では
妖精たちの舞い
霊気が他者の介入をはばむ
時雨が去って
林は微笑みとなって香り立つ
喧騒と宴の後に来るもの
育みやがて朽ち
次代に受け継がれ
ブナの高みの果ての碧
一時の青も永遠の青も同じかもしれない
▶▶詩誌『沙漠』№276(平成26年12月)所載。発行者は平田真寿(〒802-0074北九州市小倉北区白銀2丁目1-5-302)。この詩を読んで、昨夏の旅で佇んだ「美人林」(ビジンバヤシ。十日町市松之山)を思い出した。変な名前なので、たどり着くまで想像できなかったが、丘陵に生い茂る樹齢約90年ほどのブナの群生地であった。驟雨と呼ぶには激しく長すぎる雨で、同行の多くはバスで雨止みをしたが、ボクは携行した小さな折りたたみ傘をひろげて、雨がせせらいで下る坂を登り、林間の沼を見下ろせるところで、キノコのように屈み込んだ。そして傘をはみ出た雨に下半身を濡らしながら、「腐葉土はたちまち水をはらみ」「林のすべてが語り始め」る声を聞き、「育みやがて朽ち」ゆく時間を思い、「一時の青も永遠の青も」同じであると感じていた気がする。2014年 09月 12日付の「湯呑みの素十句◆家持のゆかりのいで湯薄月夜 素十」というブログで書いた卒業生との旅のひとこまである。
2015年 03月 02日
初めての連句◆「焚くほどは」脇起こし連句(一巡) 平26年度俳諧ゼミ
焚くほどは風がもてくる落葉かな 良寛
のど風邪治り戻る教室 波平
講義など聴く者はなし雪降りて 萌
ムサシと呼べば走り来る犬 由希菜
月天心晴れて居酒屋開業す 佳奈
秋刀魚枝豆だし巻きが好き 純平
萩揺るるコート出さうか出すまいか 北斗
兄弟二人舞浜にあり 真也
センター・オブ・ジ・アースやばいやばいよな 七海
野球すなはち青春と言ふ 莉沙子
タイガース契約を機に婚約す 小百合
大安売りのまづいタコ焼き 竜
寝そべれば波音近し夏の月 幹大
母の笑顔に似たる向日葵 恵祐
スーパーのバイト一年ちよつとして 大輔
卒業の日に引つ越しをする 淑恵
友人の故郷に来て花明かり 智美
枕に聞くや春の川音 祐也
朝食に摘んだばかりの蕗のたう 岳
→平成26年度俳諧ゼミ恒例の「初めての連句」。良寛の句を立句に一巡。連衆は関口波平・金子萌・小川由希菜・原賀佳奈・山本純平・神谷北斗・中村真也・豊田七海・矢郷莉沙子・今崎小百合・浅野竜・高田幹大・澁澤恵祐・中田大輔・柴淑恵・山田智美・小林祐也・高橋岳の18名。