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俳句誌の様態と相性◆たしなみ俳句会会報(No.112)より転載

 スポーツの一部に遊びを起源とするものがあるように、俳句の始まりも和歌や連歌から解放された遊戯であった。しかし、それを享受する者が増えて、競い合う段階に進むと、審判や判定する基準が必要になり、それを職業とする俳諧師が生まれた。
 芭蕉はこの俳諧師をめざして伊賀から新興都市江戸へ下る。二十九歳だった。郷里でほどほどの名望があった彼は希望通り俳諧師(職業俳人)となるが、やがて点取俳諧(俳諧師が批評した評点の多寡を競う文芸)に違和感を覚えて俳壇を離脱し、旅を日常とする人生へと舵を切る。
 我が師、村松友次(紅花)は明治の『ホトトギス』に始まる俳句誌の様態(月例のコンテスト)は、芭蕉が嫌悪した点取俳諧を継承するものだと言っていた。『ホトトギス』で育って、芭蕉学者であった先生はその矛盾を誠実に生きたが、私は先生との話し合いを経て、ある時期に俳誌への出句(投句)をやめた。それが芭蕉に、あるいは先生の教えに従うことであると考えたのである。

  啄木忌われに新聞少年期  海 紅


# by bashomeeting | 2024-05-20 14:06 | Comments(0)

やや学びいよいよ愚か◆たしなみ俳句会会報(No.111)から転載

 私は研究も俳句も村松友次(紅花)を最初の師としました。その教えの一つである「我々サラリーマン学者に芭蕉を理解できるはずはない」という話を聞いた際の衝撃と困惑は今も鮮明です(すでに話したかもしれませんネ)。
 ところで、その師の句集『簗守』(昭和53)には次の五句が含まれています。

  やや学びいよいよ愚か地虫出づ(昭37)
  学びて愚働きて貧梅雨長し(昭38)
  蛙聞く拙き講義して戻り(昭41)
  学いよよ乏しく月の細りつつ(昭41)
  つばめ来し去年の無学のままの我に(昭42)

 没後十五年ほどを経て、これらの句々を読み直しながら、先生は、つまり「我々は死ぬまで勉強であり、自分さがしを続けるしかないネ」と教えている気がしてきたのでした。
 日々の御安全を祈ります。

  風吹けば花を案ずる国に住む   海 紅


# by bashomeeting | 2024-04-18 14:53 | Comments(0)

日々に新たなり◆言ふは易く・・・

 C君の便りで、彼女たちの卒業証書授与式で話したことを思い出した。その三月はボクの退職の月でもあって、卒業生に向けて挨拶せよという所属学科の要請に従ったのだ。主意は以下の通り。

 ・・・御卒業おめでとうございます。情緒はやや異なりますが、この三月を以てわたしも定年退職し、教職の場を去ります。
 この節目は皆さんの五十年が未来にあるのに対して、私の五十年は過去にあることを意味します。
 しかし、一日の重さという点で、実はあまり変わりない。未来も過去も不確かなもので、私どもは結局一日一日を大切に過ごすしかないというのが真実のようです。皆さんと学んだ松尾芭蕉や俳諧という文芸は、つまるところ、そんなことを教えてくれたように思います。御多幸をお祈りします。

▶▶教職を終えて数年、あらためて振り返れば、これはやはり「言ふは易く、おこなふは難し」(桓寛・塩鉄論)の類であって、怠惰なる今なら言えないなあと苦笑いしたのであった。「血気に老少ありて、志気に老少なし」(佐藤一斎・言志後録)と嘯いて、改めて、みずから鞭打つことにする。
# by bashomeeting | 2024-04-05 17:05 | Comments(0)

日々に新たなり◆C君からの激励

 退職前の一年間ボクのゼミに所属していたC君から、大学院修了という報告があった。その時期はボクの手を離れた退職後のことで、コロナ感染症下であったことも影響して、大学院時代の彼女を追跡できていなかったことを侘びた。彼女はその返事に「芭蕉会議のサイトはよく覗いています。つまり私の方は先生のことをこっそり追跡していました」とあり、「サイトの更新、楽しみにしています」ともあった。
 ボクは手鈍(てのろ)になったことを口実にして、近年、特にこのブログ「海紅山房日誌」を更新するほどの元気がなかったことを恥じた。
# by bashomeeting | 2024-03-28 13:44 | Comments(0)

日々に新たなり◆ブログ更新に再挑戦

 友人に奨められて、せっかく作ってもらったブログ「海紅山房日誌」に、現役時代ほどでなくても、もう少し積極的に向き合おうという気になっている。どうぞ見守ってくださいませ。
 以下に、この心の張りが戻ってきた理由を少しばかり。

# by bashomeeting | 2024-03-28 13:39 | Comments(0)

芭蕉会議の谷地海紅(快一)のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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